『チ。―地球の運動について―』最終回解説｜ラファウは生きてた？結末の真意とは？【考察あり】

2022年に原作が完結し、2024年にアニメ化された話題作『チ。―地球の運動について―』。

本作の最終回に対して、多くの読者が感動とともに疑問や混乱を抱いたようです。

特に話題となったのが、物語序盤で命を絶ったはずのラファウが、最終章で再び登場するという演出です。

この記事では、最終回のあらすじやラファウ再登場の意味を振り返りながら、作品に込められた深いメッセージを筆者独自の考察を交えて解説していきます。

『チ。―地球の運動について―』の最終回を解説【考察あり】

最終回のあらすじ｜ラファウは生きてた？

『チ。―地球の運動について―』のアニメの最終章にて、多くの方が疑問に思ったのが、「え、ラファウって生きてたの？」ということだと思います。

ラファウについては、物語の序盤で毒薬にて自らの命を絶っている描写があるため、終盤にてラファウが再登場したシーンに驚いた方も多くいたことでしょう。

さらには、12歳の少年だったラファウが、少し成長して青年になっていることにも戸惑いを覚えたのではないでしょうか。

この点について、筆者なりの考察を交えながら順を追って解説をしていきます。

最終章のあらすじ

『チ。―地球の運動について―』の物語の進行の仕方は、他の作品ではあまり見られない独特なものとなっています。

というのも、一人の特定の主人公を中心に物語が進行するのではなく、「地動説」という学術的な仮説を、何人かの人物によって後世に語り継いでいくという構成になっているからです。

つまり、この作品の主人公は「地動説」そのものといってもいいでしょう。

そして、最後の章で中心人物となっているのが、実在した偉人である「アルベルト・ブルゼフスキ」でした。

彼は、過去の”ある壮絶な体験”によって、「知を探求する」という行為を嫌悪していました。

過去に親を亡くしたブルゼフスキは、パン屋を営む「親方」の元で育てられ、ある日、その親方から大学へ行ける段取りをつけたから大学へ行けと打診されます。

昔は学問に対してこれ以上ない興味を持っていたブルゼフスキでしたが、現在では逆に学問を害悪とののしるほど毛嫌いするようになっていたため、この話を一度は断ります。

しかし、ブルゼフスキは親方から学問についてまだあきらめきれてないことを見抜かれ、自分でも自分の感情が分からないままでした。

話が一段落したあと、ブルゼフスキは親方に頼まれて、最近知り合ったという司祭の元へパンを届けることに。

パンを届けるだけのつもりでしたが、司祭に促され、告解室にて自分の過去について語るといった形式で最終章の物語が展開されていきました。

ラファウの再登場

ブルゼフスキが自身の過去を語りはじめ、時はブルゼフスキの少年期にさかのぼります。

彼の父は学びを重んじる人でした。家には様々な文献があり、ブルゼフスキもその影響であらゆることを知りたいと思う好奇心旺盛な少年でした。

そんなブルゼフスキのために、父は家庭教師をつけます。その家庭教師こそ、序盤で死亡したはずの「ラファウ」でした。

知は何かの目的のために使われるべきと考えている父とは反対に、ラファウは「知りたい」と思うことそのものが尊いものであるという考えをブルゼフスキへ伝えます。

その思想を最も象徴している筆者の好きなセリフがあります。

「知の探究が人や社会の役に立たなければならない」なんて発想は”クソ”だ。

引用元：チ。―地球の運動について―　8巻

知りたいという欲望のためなら、「死」をもいとわないと言ってのけるラファウの言葉は、実際に彼自身が物語序盤で、「知の探究」のために服毒自殺を実行しているため説得力が違います。

最終回はなぜ「ひどい」と言われるのか？

ラファウの登場が生んだ混乱

最終回について「ひどい」という口コミが多い原因としては、やはり死んだはずのラファウが再登場するため、物語の連続性が消失し、「パラレルワールド」や「if世界線」のような、一種の「夢オチ」に似た感覚に陥ってしまったためでしょう。

どんなに優れた作品でも、「夢オチ」というのは読者の没入感を一気に冷めさせる要因になることは否めませんよね。

というのも、それを是としてしまうと、「なんでもあり」になってしまうからです。

物語は制約があって初めて成立し、また、そこに面白さが宿るものです。

それを何でもありにしてしまうと、物語の制約は解除され、ゲームでいう「チート」になってしまって一気に熱が冷めます。

そのような感覚を覚えてしまった方にとっては、作品自体の評価はいまひとつということになってしまったでしょう。

報われない登場人物たち

もう一つが、最終回というよりは、物語全体に言えることですが、「地動説」をリレー方式でつないできた登場人物たちが、誰一人として報われなかったことです。

何か作品をみる時は、やはり主人公には報われてほしい、ハッピーエンドで終わってほしいと思うものですよね。

バッドエンドでも面白い作品は多くありますが、それでも人間の感情としては、感情移入した主人公に最後は何かしらの報いがあってほしいと願いながら物語を読み進めます。

しかし、この物語では、「地動説」に関わったキャラクターたちは、最後の主要キャラであるブルゼフスキを除き、道半ばで死を遂げることになります。

このような形式の他の作品を例示してみろと言われても、すぐには思いつかないほど、この作品の物語構成はかなりのレアケースと言えるでしょう。

せめて最後の女の子「ドゥラカ」だけは何とか生き延びてほしいと筆者も願っていましたが、そんな彼女も自分の役割を遂げ、安らかな死を迎えることになります。

登場人物に感情移入すればするほどに、みんな死んでしまうなんてひどすぎる！と感じた方も少なくなかったのではないでしょうか。

筆者感想

物語全体の筆者自身の感想を、上記の意見にも答えながら書いていきます。

まず、一言で言うなら、『チ。―地球の運動について―』は間違いなく神作品です。

漫画やアニメの位置づけとしては、あくまで「娯楽」として捉えていますが、人生観を揺るがすほどの感動を与えてくれる作品は滅多に出会えるものではありません。

そういった点で、『チ。―地球の運動について―』は、人間の「知」への向き合い方や、生きることの本質に触れることのできる壮大な物語でした。

ラファウ再登場について

ラファウが再度登場したとき、筆者も正直、少し混乱しました。さらには、少年のまま死んだラファウが、なぜか青年姿となっているのにも驚きを隠せませんでした。

ただ、物語の主役はあくまで「地動説」を介した「知の探究」であり、キャラクターそのものではありません。

もう少し具体的に言えば、「知や真理を追究する姿勢そのもの」がテーマであり、例えそこに物語の連続性がなかったとしても、作品に込められたある種のメッセージのようなものは十分に伝わったし、感動を与えてくれました。

つまり、ラファウの再登場によって、最終章が「パラレルワールド」もしくは「if世界線」と解釈されるという発想は、全くの見当違いのように思えてなりません。

ラファウという登場人物は、「知への向き合い方」に対する一つの解釈を象徴するものであり、もはや死んだ人物を何の理由もなしに再登場させるのは意味が分からないという考えは、よく言えば真面目すぎるし、悪く言えば「頭が堅い」。

自分が知っている物語としての構成のあり方に、あまりにもこだわりすぎている気がします。

ドゥラカとシュミットの章までの物語と、ラファウが再登場するブルゼフスキ篇までの物語はちゃんと繋がっています。

告解室の司祭が、オクジー・バデーニ篇で登場した新人異端審問官であったり、ポトツキさん宛の手紙がちゃんと届いたりといった要素からも説明できますが、そんなことより、この物語においての象徴的テーマである「知」や「信念」、「真理」に対しての向き合い方が、ちゃんと継承されているからです。

『チ。―地球の運動について―』は1話から最終話まで、一連の流れとしてしっかりと繋がっているのです。

地動説に翻弄された登場人物たち

何度も言いますが、この作品が「地動説」を軸として展開していくため、主要キャラが入れ代わり立ち代わりでついていけなくなった方もいるかと思います。

そして、「地動説」という、たかだか天文の一仮説にすぎないものによって人生が翻弄されている登場人物たちが不憫だと感じた方もいるでしょう。

しかし、それはかなり表面的な見方しかできてないように思えます。

ラファウは要領よく人生を生きており、将来有望な少年でした。

オクジーは現世を諦め、早く天国に行きたいと願っていました。

バデーニは日々、「知」を追求することに没頭していました。

ドゥラカはお金持ちになるという目的のため、日々奮闘していました。

そんな彼らの「それなり」の日常が、「地動説」によって一変します。

彼らは「地動説」に出会ってからは、自身の目的を遂げるために奔走し、それがダメならなんとか後世に残せるよう、自身の犠牲もいとわず「信念」を貫いていました。

もちろん「命」は他の何よりも大切なものですが、現代人はあまりにも「生」に固執しすぎており、人生の本質を見失っている気がしてなりません。

「危険」や「リスク」をうまく回避して「そこそこ」の人生を送るよりも、自分の命を燃やせる価値のあるものに没頭する人生のほうがよほど価値があるのではないでしょうか。

そういった意味では、最期まで自分の役割を果たすべく務めた登場人物たちは、それまでの人生の何倍も命を燃やせたのだと思います。

筆者が不覚にも涙したシーンについて

歳を取るにつれて、ちょっとしたことで涙してしまうほど涙もろくなってしまった筆者ですが、この作品でも涙してしまったシーンがあります。

それは「オクジーが満ちている金星を観測したシーン」です。

宇宙を見ることすらおびえていたオクジーが、ピャスト卿に目の良さを認められ、金星を裸眼で観測するシーン。

特にアニメでの演出はかなり感動的で、オクジーが一言「満ちてる・・・」とつぶやいた瞬間、私の目には涙が流れていました。

金星が満ちているとすれば、それは金星が太陽の後ろに回り込んでいるということになり、地動説が有力となる大変重要な事実です。

つまり、金星が満ちているか満ちていないかということが、この作品の大きな転換点になりうるため、より一層感動が増したのだと思います。

ここで期待を煽りに煽って、「満ちていない」という結末もあり得ましたが、変にもったいぶらずストレートに金星が満ちている描写を描いてくれたことで、逆に不意を突かれたような感覚にも陥りました。

これまで、天文に関して無頓着で、ただバデーニの手伝いをしていただけのオクジーが、「満ちていてほしい」と願ったことも、オクジーが作品に積極的に参加してくれたような気がして嬉しかったです。

『チ。―地球の運動について―』のあらすじ・登場人物

『チ。―地球の運動について―』のあらすじ

15世紀のヨーロッパ某国。飛び級で大学への進学を認められた神童・ラファウ。

彼は周囲の期待に応え、当時最も重要とされていた神学を専攻すると宣言。

が、以前から熱心に打ち込んでいる天文への情熱は捨てられずにいた。

 

ある日、彼はフベルトという謎めいた学者と出会う。

異端思想に基づく禁忌に触れたため拷問を受け、投獄されていたというフベルト。

 

彼が研究していたのは、宇宙に関する衝撃的な「ある仮説」だった――。

引用元：TVアニメ「チ。 ―地球の運動について―」公式

登場人物

『チ。―地球の運動について―』に登場する主なキャラクターを紹介します。

ラファウ

物語の第一部の主人公。神学校に通う優等生で、将来有望な少年。

ある日、異端者であるフベルトと出会い、彼が密かに研究していた地動説に触れることで、「知」の追及と理性の間で大きく揺れ動くようになる。

知の探究が命を脅かすこの時代において、それでも真理を追い続けることの尊さに気づき、信念をもってフベルトの研究を継承していく。

ノヴァク

異端審問官。ヨレンタを娘に持つ。

異端者に対して拷問し、真実を吐かせる能力に卓越している。特に天文分野に力を入れており、物語の最後まで「地動説」を研究しているものを弾圧しようとする。

最期まで「地動説」に翻弄された、ある意味では最大の被害者とも言える。

バデーニ

田舎の教会に身を置く修道士。過去に「知」を探求し続けたことによって目を焼かれ、右目に眼帯をしている。

並外れた頭脳と知識を持ち、オクジーとともに「地動説」を完成させるため、日々研究に務めている。

オクジー

現世を諦めており、早く天国に行きたいと願っている代闘士。

異端者の移送中に「地動説」に出会い、バデーニの研究を手伝うことになる。

人間とは思えないほどの視力を持ち合わせている。

ヨレンタ

異端審問官であるノヴァクの娘。

天文に興味があり、研究室で学びたいという願望があるものの、「女性である」ことを理由に授業に参加させてもらえずにいる。

バデーニとオクジーの研究に参加することとなる。

ドゥラカ

ある貧しい村に住む少女。

不安から逃れるため、お金持ちになることを目的とし、日々その方法を探していた。

「地動説」に出会い、何かが変わるかもしれないと感じ、シュミットに協力する。

ブルゼフスキ

パン屋の義理の息子。

過去に実の父を亡くしており、その時の経験から学問を嫌悪するようになる。

この作品の最後の主人公で、唯一歴史上に実在した人物。

『チ。―地球の運動について―』の評価・口コミは？

高評価の口コミ

・「一話ごとの引きが強く、読み始めたら止まらない」
・「学問をテーマにしているのに、こんなにエンタメ性が高いのはすごい」
・「キャラクターたちの“バトンを繋ぐ”構成が斬新で感動する」
・「中世の宗教と科学の対立を通して、現代にも通じるメッセージがある」

総じて『チ。―地球の運動について―』という作品は、他作品と比べるとかなり「異質」な作品ですよね。

王道バトルやミステリ、青春といった分かりやすく「ウケる」ジャンルではなく、むしろとっつきにくさを感じる人も一定数いるであろう「学問」をテーマとしています。

にもかかわらず、ここまで我々を惹きつけるのは、もちろん構成上のテクニックなどの要因もあるでしょうが、やはり「人生観」に対するメッセージ性だと感じます。

自分の人生と照らし合わせながら、『チ。―地球の運動について―』という作品を通して深く考えた人ほど、この作品をより楽しめたでしょうし、それが一番の楽しみ方だと思いました。

低評価の口コミ

・「キャラクターがすぐに退場してしまうのがつらい」
・「最終回があっさりしすぎて物足りない」
・「難解なテーマや専門用語が多く、読みにくい」

「地動説」をバトンとしたリレー方式で物語が展開されていくため、やはり好きになったキャラが「死」によってすぐに退場してしまうのは、一読者としては少し辛いものがありますよね。ものすごくわかります。

特に筆者は、他を寄せつけない圧倒的カリスマ性を持ったキャラが好きなため、バデーニさんにはなんとか思いを遂げてほしいという思いがありましたが、ノヴァクの執念に一歩及ばず退場した時は本当に悲しかった。

また、物語にスピード感があったため、逆にあっさりしすぎと感じた方もいたようですね。

ただ、無駄に間延びせず、最期まで全力疾走だったのがこの作品の魅力でもあると思います。人気作品は大人の都合で完結まで長引かせるものも少なくないですから、そういった意味では、より読者に寄り添っていた作品であったと思います。

アルベルト・ブルゼフスキ は実在の人物？史実との関係

最後の主要キャラである「アルベルト・ブルゼフスキ」は、本作品に登場するキャラの中で唯一、歴史上で実在した人物です。

15世紀ポーランドの天文学者・数学者・哲学者であり、外交官としても活躍した知の巨人です。

1445年頃にポーランドのブルゼヴォ村に生まれ、主にクラクフ大学で教鞭を執った学者です。彼は天文学と数学を中心に、アリストテレス哲学や文学にも精通しており、当時の知識人たちに多大な影響を与えました。

また、彼の門下にはあのニコラウス・コペルニクスもいたことが知られており、後の地動説確立の基盤を築いた人物のひとりとも言えるでしょう。

告解室の司祭は誰？

ブルゼフスキと話していた告解室の司祭について、作中で名前が明かされなかったため、誰だったのか気になっている方が多いようです。

結論としては、この司祭はオクジー・バデーニ篇で初登場した「レフ」という新人異端審問官です。

もう一人の名前は「シモン」といい、ヨレンタを庇って処刑されましたよね。レフがブルゼフスキに打ち明けた秘密というのも、以前に同僚を見殺しにしてしまったという内容でした。

さらには、声優も同じ「間島淳司」さんであったことから、推測ではなく確定といっていいでしょう。

アニメはどこのサブスクで見れる？

『チ。―地球の運動について―』のアニメは、複数の動画配信サービスで視聴可能です。

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まとめ：『チ。―地球の運動について―』はただの歴史ドラマではない

『チ。―地球の運動について―』は、一見すると中世ヨーロッパを舞台にした「歴史ドラマ」に見えるかもしれません。

しかし、この作品の本質はそこにとどまらないということを解説してきました。

地動説という学術的なテーマを通して、人間の「知への探究心」や「信念」、「命の意味」といった、より普遍的で深いテーマを描いています。

物語は一人の主人公ではなく、地動説という“思想”を軸にリレー形式で語り継がれていきます。その中で登場人物たちは、時に命を落としながらも「真理は受け継がれる」という意志を後世に託していきます。

最終回で再登場するラファウ、ブルゼフスキの葛藤、そして告解室の司祭との対話──それらすべてが「知」とは何か、「生きる」とは何かを問いかけてきます。

たとえ報われなくとも、信じたものに命を燃やした者たちの生き様こそが、この作品最大の魅力であり、深い感動を与えてくれました。