アニメ「オッドタクシ―」は、P.I.C.SとOLMの共同制作による作品で、2021年に放送された人気アニメです。
今でも多くの人が楽しんでいる「オッドタクシ―」ですが、多くの伏線が張り巡らされていたり、登場人物が多く、それぞれの目的や関係性がわかりづらい部分があるため、この作品の大枠である事件の流れをこの記事でまとめてみました。
この記事では、それぞれの登場人物がどのように事件に関わっているのかや、因果関係をメインに解説しています。
ネタバレありきで解説していますので、1度アニメを最後まで見た後に読んでいただけるとより楽しめる内容となっているかと思います。
あらすじ
お客さん、どちらまで?
見慣れた街のはずなのに、この街は少しなにかが違う気がする。
平凡な毎日を送るタクシー運転手・小戸川。
身寄りはなく、他人とあまり関わらない、少し偏屈で無口な変わり者。
趣味は寝る前に聞く落語と仕事中に聞くラジオ。
一応、友人と呼べるのはかかりつけでもある医者の剛力と、
高校からの同級生、柿花ぐらい。彼が運ぶのは、どこかクセのある客ばかり。
引用元:オッドタクシー テレビ東京アニメ公式
バズりたくてしょうがない大学生・樺沢、何かを隠す看護師・白川、
いまいち売れない芸人コンビ・ホモサピエンス、街のゴロツキ・ドブ、
売出し中のアイドル・ミステリーキッス…
何でも無いはずの人々の会話は、
やがて失踪した1人の少女へと繋がっていく。
小戸川は何故事件に巻き込まれたのか
小戸川はごく平凡なタクシードライバーで、もちろんヤクザとの繋がりもなければ、練馬女子高生失踪事件に関与しているわけでもありませんでした。
では、なぜそんな小戸川がここまで深く事件に関わることになり、ヤクザ組織を一網打尽にするという危ない橋を渡ることになったのでしょうか。
その全容を紐解いてみようと思います。
小戸川の部屋には誰がいた?
小戸川が事件に巻き込まれるきっかけとなった要因はいくつかありますが、一番分かりやすいのが、一人暮らしのはずの小戸川が誰かと喋っているらしいという噂が流れたこと。
アニメの終盤になって分かることですが、この押入れの中にいた正体は黒猫でした。
しかし、この噂がきっかけとなり、小戸川は事件に巻き込まれてしまうこととなるのです。
ドブの目的:行方不明の少女を探している
1回見た程度では、なんとなくスルーしてしまいそうですが、そもそもなぜドブは小戸川に目をつけて協力を依頼したのでしょうか。
ドブが小戸川のタクシーに最初に乗り込んだのは、ボスからの依頼によるものでした。
アニメ3話にて、銭湯で電話するドブのボスと、自分に話しかけられていると勘違いして応答する柿花の会話シーンがあります。
余談ですが現実でもこういうことありますよね。「あ、電話だったんだ」っていう。
ただ、終始それに気づかずに会話が終了するというのはある意味奇跡。
実際にボスが会話しているのは電話の向こう側のドブです。
その会話で繰り広げられる内容が、小戸川を調べて失踪した女子高生の行方を追ってほしいというもの。
後ほど明らかになりますが、失踪した女子高生の父親は大御所落語家である「笑風亭 呑楽」であり、ドブのボスは吞楽の旧友であるため、ボスは吞楽のためにドブに女子高生を探すよう命令するのです。
大門兄からすでにドラレコのデータを受け取っていた理由は?
しかし、よく考えると、ドブがボスに依頼を受ける前に、すでに大門兄からデータを受け取っていました。
つまり、ボスから依頼を受ける前にすでにドブは独自に小戸川を調べていたことになります。
仮に小戸川が事件に関わっていたとしても、ドブがタクシーのドラレコを入手してまで小戸川を調べる道理はありません。
ではなぜドブは小戸川のタクシーのドラレコデータを入手する必要があったのか。これはドブが最初に小戸川のタクシーに乗ってきたときの会話で知ることができます。
小戸川にとってはかなりの不運が重なってしまいましたが、ドブが小戸川が失踪事件の犯人であるという噂を知っていたことと、ドブのしのぎのメインが銀行強盗であるということが、小戸川がドブに目を付けられる要因でした。
どういうことか詳しく解説します。
ドブは銀行強盗に協力してくれるタクシードライバーを探していた
小戸川の通う剛力医院でナースとして働く白川という女性がいますが、この白川は作品のキーパーソンです。
ドブは白川の借金を肩代わりしており、その返済のため、白川はドブの言う通りに動くしかなく、病院から薬を盗んだり患者リストを渡したりしていました。
映画版での白川の証言から分かることですが、ドブはその患者リストから小戸川がタクシードライバーであることを知り、さらにはその小戸川が失踪事件に関わっているという噂を耳にしたため、その情報で小戸川をゆするためにドラレコの録画データを入手したのです。
しかしそれならなぜドブはボスからの依頼を受けたときに、「実は小戸川のドラレコのデータを持っているから調べる」と言わなかったのか。
それは、ただでさえ後輩でありライバルでもある矢野に、「ドブはセコいしのぎしかしない」と吹聴されている手前、ボスにドラレコのデータを持っている理由を言えなかったためです。
そして実は切れ者であるドブは、失踪事件の捜索願いが取り下げられた一連の流れから、そんな入れ知恵をするのは矢野しかいないと推測し、矢野が事件に絡んでいれば逆に矢野を失墜させることができるかもしれないと、ドラレコのデータを欲しがろうとする人物の情報を提供するよう小戸川に依頼します。
こうして小戸川は、平穏な生活から一転、事件に巻き込まれることとなってしまったのです。
矢野・関口・山本の目的:死体遺棄の隠蔽
矢野サイドが小戸川タクシーのドラレコのデータを狙う理由は、事件当日の少女の足取りの隠蔽です。
後ほど詳しく解説しますが、矢野や関口、特に山本には、事件当日、行方不明になった少女の行動を隠蔽する必要がありました。
そのため、タクシーのドラレコのデータに、少女がタクシーに乗ってミステリーキッスの事務所に向かったという事実がデータとして残っていることは都合が悪いため、山本はなんとしてでも小戸川からデータの回収をしようとします。
事件当日の10月4日に起こった事件の真相
この記事はネタバレを前提として書いていますので、この作品のテーマである「練馬女子高生失踪事件」の真相を解説した上で話を進めた方が理解しやすいと思いますので、先に事件の真相に触れておきます。
行方不明の少女の足取りは?:真犯人の正体
先にこの作品の重要なネタバレですが、「練馬女子高生失踪事件」の被害者は、元ミステリーキッスメンバーの「三矢ユキ」であり、笑風亭吞楽の娘です。
そして、三矢ユキを殺害した真犯人は、新たに「三矢ユキ」としてメンバーに加入した「和田垣さくら」でした。
和田垣さくらが三矢ユキを殺害した方法と理由
この作品では、異常と言ってもいいほどに盗聴器やGPSが使用されます。
若干辻褄合わせに利用されている感は否めませんが、和田垣さくらの三矢ユキ殺害についても、盗聴器等の三矢ユキの動向を知る手段がなければ成立しません。
なぜなら、事件当日、事務所ビルに三矢ユキを呼び出したのは和田垣ではなく、二階堂ルイであり、この二階堂ルイに罪をなすりつける絶好のシチュエーションにたまたま居合わせるはずもなく、三矢ユキの動向を盗聴器か何かで知る必要があったからです。
そしてルイが到着する前に三矢を絞殺してその場を立ち去り、和田垣の計画は成功します。
和田垣が三矢を殺害した理由は、ミステリーキッスのメンバーになるため。
和田垣は母親の影響からか、どんな手段を使ってでものし上がるというのが信条であり、そのためなら殺人もいとわないという狂気じみた性格をしています。
オーディションで自分は4番目だったとマネージャーの山本に聞かされていた和田垣は、誰かがいなくなれば繰り上がりでメンバーになれると確信していたのでしょう。山本の「なんとしてでもミステリーキッスを成功させる」という執念も和田垣の計画にいい方向に働き、三矢を失ったミステリーキッスに、あらたに2代目三矢ユキとして加入することに成功するのです。
三矢ユキ入れ替わりの伏線
三矢ユキが初期の三矢ユキではないことの伏線は至るところに散りばめられていました。
容姿の違い
一つは、その容姿です。視聴者として見る分には初見でその違いに気づくことは難しく、制作側にも視聴者を騙す意図があったと思います。
本物の三矢ユキはつり目で左耳にピアスという見た目に対し、偽三矢(和田垣さくら)は前髪が垂れており目も大きめ。
もちろんその容姿の違いを隠す目的で二階堂以外のメンバーは仮面をすることがデビューの条件となっていましたね。
ただ、本物の三矢は最初のライブで顔出しをしており、たった5人の客でしたが、その中の一人であった今井は三矢の本当の顔を知っているため、山本は今井をかなり警戒しています。
三矢のパフォーマンスについての今井の指摘
アニメ2話にて、ミステリーキッスのライブ後のシーンにて今井が初登場します。
その際、推しである二階堂ルイに対して、「三矢さん、ダンスのキレ悪くなったよね。具合でも悪いのかな」と三矢のダンスのクオリティについて指摘する場面があります。
これが実は重要な伏線となっていました。
本物の三矢ユキはダンスに関しては圧倒的に上手く、それもあってデビュー直前にプロデューサーからセンターとして抜擢されます。これが後の悲惨な事件に繋がるのですが…。
今井はミステリーキッスの最初のライブに居合わせており、本物の三矢のダンスのクオリティを知っています。しかし、和田垣と入れ替わってからは仮面をしているため、まさか三矢が別人であるとは気づかずに、ダンスのキレが悪くなったことを指摘するのです。
タクシー内でのミステリーキッスメンバーと山本の会話
アニメ5話にて、山本が小戸川のタクシーを偶然つかまえてメンバーを迎えに行くシーンがあります。
最初に乗せるのは三矢こと和田垣さくらで、山本が和田垣に「三ツ谷が一番後輩なんだから、他の子より努力しないと」と言いますが、新しく結成されたグループメンバーに先輩も後輩もないはず。
さらには、和田垣をスタジオに降ろした後に市村しほを迎えに行きますが、
「三矢さんみたいにダンス上手くないし」
「苦手なんだあの子、前の方が良かった」
という発言から、ここで市村が言う「三矢さん」というのは、初代の三矢ユキのことであることが分かり、現在の三矢ユキが2代目であることを示唆しています。
小戸川が乗せたミステリーキッスのメンバーは誰?
市村をスタジオに降ろしたあと、山本は小戸川からミステリーキッスのメンバーを2週間ほど前に乗せたことを告げられ、10月4日の事件当日に本物の三矢ユキが小戸川のタクシーに乗ったことを悟り、ドラレコのデータを回収しようと画策します。
山本は三矢ユキの死体遺棄に関与しており、三矢ユキがタクシーに乗って事務所に来ていたことがドラレコのデータから警察に知られたら、そこから足がつく可能性を恐れています。
そのため、矢野からもドラレコのデータを回収するよう指示を受けており、小戸川タクシーのドラレコデータを回収しようとするのです。
しかし、実際に小戸川が事件当日に乗せたのは三矢ユキではなく和田垣さくらでした。
山本はまさか和田垣がユキを殺害したなんて夢にも思っていないでしょう。
実は、作品終盤の銀行強盗作戦が決行される直前に、小戸川が10月4日に乗せたのは和田垣であることを伝えようとするのですが、殺害された三矢ユキと、前回タクシーに乗せた三矢ユキが別人であると伝えたところで電話を切ってしまい、山本は真相を知ることは出来ませんでした。
山本はなぜ事件の隠蔽を矢野に依頼した?
二階堂ルイが、三矢が殺害されている現場に遭遇してすぐに山本が現れます。恐らく二階堂に呼び出された三矢が不穏な空気を察知し、念のため山本に連絡を入れていたため居合わせたのだと思いますが、ここでの山本の行動は少し不自然に思えます。
山本の目的は何としてでもミステリーキッスを成功させることですが、三矢の殺害に関しては、まだメンバーではない和田垣の犯行ですから、ミステリーキッスサイドには何の落ち度もないことです。
メンバーが殺害されたとしても、すぐに復帰は難しいでしょうが、それこそ和田垣のようなメンバーを加入させるなどして再起は可能です。
しかし二階堂が犯人であれば話は別。ミステリーキッス自体が消滅し、山本の夢は無に帰してしまう。
二階堂が犯人であるという可能性を拭えなかったからこそ、山本は矢野に死体遺棄を依頼したのです。
これがそもそもの間違いであり、ミステリーキッスが矢野にいいように使われるきっかけにもなってしまいます。
以上が事件の真相となります。
小戸川がドブに協力する理由と真の目的
いくつもの不運が重なり、小戸川はヤクザのいざこざに巻き込まれてしまうのですが、事件当日に和田垣を事務所に送り届けただけで、直接的には事件には何の関わりもなく、ドブに協力する必要などないはず。
では、なぜ平穏な生活を送っていた小戸川がドブに協力し、最終的には組織の一網打尽を企てるようになったのでしょうか。
想い人、白川の解放
白川は小戸川の友人である剛力の病院で働くナースです。
白川は以前にドブと付き合っており、借金があることによりドブとの関係性を断ち切れずにいました。
そんな中、ドブは白川に、小戸川に近づくよう指示します。白川は指示通りに小戸川との距離を縮めようとしますが、やがて小戸川にドブの差し金であったことを知られてしまいます。
しかし、最初はドブの指示でしたが、小戸川と接する内に、白川は小戸川の人間性にしだいに惹かれていきます。
小戸川に近づいた真意や今の気持ちを正直に伝えますが、小戸川には2度と俺に近づくなと一蹴されてしまいます。
小戸川は騙された悔しさと、まだ白川のことが好きであるという自分の感情が複雑に交錯する中、それでも白川を救うことを決意し、ドブに協力することと引き換えに白川をドブから解放することとなります。
友人、柿花の復讐
柿花は小戸川の学生時代からの友人です。
41歳で非正規雇用という、あまり魅力的ではないスペックですが、マッチングサイトのプロフィールを捏造することによって「しほちゃん」と出会うことになるのですが、このしほちゃんの正体はミステリーキッスの市村しほであり、矢野や山本から美人局(つつもたせ)をさせられている少女です。
柿花はすっかり騙されてしまい、矢野とその部下の関口によって監禁されてしまいます。
今井との会話がきっかけで柿花の現状を悟った小戸川は、ドブを上手く言いくるめて柿花救出に協力させ、見事柿花を埠頭の倉庫から救い出すことに成功します。
友人をこんな目に合わされては小戸川も黙っているわけにはいかなかったのでしょう。ドブの銀行強盗作戦を利用し、矢野陣営も失墜させる計画を企てました。
関連作品を観れば多くの謎が解ける
オッドタクシ―はオリジナルアニメなので、漫画や小説などが原作ではないのですが、アニメが好評だったこともあり、多くの関連作品が制作されています。
その中でも、アニメ放送終了後にも分からなかったいくつかの伏線は、映画である「オッドタクシ―イン・ザ・ウッズ」や、探偵見習いの玲奈に焦点を当てたスピンオフ作品「Root of オッドタクシ―」で明らかにされるものもあります。
そのため、より深くオッドタクシ―について楽しみたい方は、これらの作品も合わせて視聴することをおすすめします。
\「Root of オッドタクシ―」はNetflixで独占配信中!/
まとめ
この記事では、展開が早く初見でスルーしてしまいがちなそれぞれの目的や行動の合理性について解説しました。
この前提を知ることによって、作品に説得力が生まれ、「オッドタクシ―」を何度も楽しめることと思います。
以下に、簡単に記事の内容をまとめておきますので参考にご覧ください。
- 小戸川の部屋にいたのは黒猫だった
- 行方不明の少女はボスの知り合いの娘だった
- ドブの目的は行方不明の少女の捜索と銀行強盗
- ドブはその目的のために小戸川に協力を依頼した
- 小戸川は白川をドブから解放するため協力した
- 山本は死体遺棄隠蔽のためドラレコを入手する必要があった
- 山本は二階堂が殺人の犯人と思っていた
- 三矢ユキの正体は身代わりの和田垣さくらだった
- 本物の三矢ユキはすでに和田垣さくらに殺されていた
- 小戸川が10月4日に乗せた客は三矢ユキではなく和田垣さくらだった
- 小戸川は柿花の復讐のため矢野たちも失墜させようとした
- 小戸川はドブや矢野の組織を一網打尽にしたかった